君を想うとき 番外編 雪が降ったら 斗和子は一人、ベランダに出て夜風にあたっていた。 母親の操が亡くなってからというもの、こういった賑やかなクリスマスを過ごすことがなかったのだ。 その所為か、どうも場違いな気がしてちょっとしんみりしたい気分だった。 そんな斗和子に気づいた慎二もベランダに出てきた。 「…斗和」 「慎二…」 「寒くないか?」 「ん…うん、大丈夫」 「どうした?」 慎二は僅かだが、斗和子に元気がないことに気づいていた。 「ん…いや、なんかなぁ…と思って」 「…何が?」 慎二の言葉には応えず、斗和子は身体を反転させて部屋の中を見た。 部屋の中では、勇哉と謙吾がゲームで白熱している姿を睦美と陣夜、それに正道が笑って見ている。 「…慎二も混ざってこなくていいの?」 「いや、俺はいい」 「そう…」 慎二はどうしたものかと、斗和子を見つめた。それに気づいた斗和子は慎二に何?と言いたげに顔を向ける。 「話くらいなら、聞いてやってもいいけど」 「ハハ、ありがと…」 室内を見ていた斗和子は、今度は慎二の方を向いて半身をベランダの柵に預けた。 そして、数秒の間を置いた後、話し出した。 「…母さんが死んでから、毎年クリスマスにはサンタにお願いしてた…オモチャなんていらないから母さんに会いたいって」 サンタなんていないとわかっても、それでも毎年…。 「クリスマスだっていっても陣夜は仕事の時もあって…そうじゃない時もこんなに賑やかなことなかった」 そう話す斗和子の視線は慎二を見ているはずなのに、どこか別の場所を見ているようだった。 「…斗和子!!」 「え…?」 「大丈夫か?」 「あ・・・うん」 そうは言ったものの、慎二は斗和子がどこかに行ってしまいそうで頬に手を添えた。 斗和子は急なことに目を瞬かせた。 「どうしたの?」 「いや…斗和が」 「あたしが?なに?」 「どっかに行っちまいそうな気がしたから…」 「…どこにも行かないよ…ねぇ、慎二」 斗和子は頬に添えられている慎二の手に自分の手を重ねた。 「あたし、慎二に出会えてよかったと思ってるよ。今年は…母さんいなくなって初めて、寂しくないって思えるクリスマスなんだ」 「斗和…」 「あ…雪だ」 「ほんとだな…」 それはまるで、操が一人立ちできた斗和子を褒めているようだった。 「…母さんがエライって言ってくれてるの、かな?」 「…かもな」 「くしゅッ!」 「中、入ろうぜ」 「うん…」 先に窓へと手をかけた斗和子に慎二が後ろから声をかけた。 「斗和、」 「ん、何?慎二」 「俺がこれからもずっと傍にいるから」 「…うん、ありがとう」 「寂しくなったらいつでも呼べよ」 「わかった…慎二、好きだよ」 「ああ、俺も斗和が好きだ」 2010/01/15(20061222) ネタバレ注意報。’06時xmas企画でした。 Christmas5のお題*Dream of Butterfly 君を想うとき TOP |