煌く綺羅の夜 -第八章 大波到来!?波乱の予感!?- ヨーシュは、村で唯一の酒場『蘭香−ランコウ−』に居た…その隣には、天紅がいる。 天紅は…酒場で牛乳を飲んでいた。 「…煌瑚さん…大丈夫、だろうか…」 ヨーシュはぽつりと呟いた。 そこへ、先程の無礼な男―四葉―がやってきた。 「いらっしゃい。何にします?」 マスター―緋耶牙の父―は、カウンターに腰を掛けた四葉にそう言う。 「…一番美味いのを…」 「あいよ」 ヨーシュは、ちらりとも四葉の方を見なかった。 ただ、静かに飲んでいる。そして、男も…ヨーシュのことは見なかった。 お互い感じる魔力だけで、相手が誰か分かっていたから。 ――由騎夜は森にいた。 木の上から一点を見つめている。 その視線の先には…姉、煌瑚の姿があった。 煌瑚が由騎夜に気づいている様子は――無い。 (まったく…何があったか分からないけど、姉貴も肝据わってるよな…一人で夜の森に来るなんて) 由騎夜は姉が色んな意味で耳がイイコトをわかっている。 だから、今は悟られないように、自ら心を閉じている。鎧綺には、出来ない芸当だ。 (それにしても……細かったよな…… 由騎夜は思わず思い出し、赤面した。 が、のんびりしてはいられない事態になった。 煌瑚以外の人影が現れたのだ。 それも二つ。煌瑚よりも大柄だ。 (…男か?) 由騎夜は、気候弾で手ごろな木の枝を切り取った…。 (…ヨーシュに…悪いこと、したわね…) 煌瑚は一人になり、ようやく少し落ち着きを取り戻していた。 煌瑚は深呼吸をする。 この森の空気が、煌瑚を我に返らせていた。 それでも…今夜は誰にも会いたくなかった。 何を言い出すかは、分からなかったから。 と、急に声が聞こえた。それもすぐ後ろで。 すぐ後ろに来るまで気づかなかったというのは、煌瑚らしくない。 それだけ、今の状態が普通ではなかったのだ…。 「…誰」煌瑚は咄嗟に訊いていた。 「へっへっへー、今日はツイてるなぁ。こんなところで、あんたに会えるなんて」 「あぁ、一人じゃ危ないから一緒に居てやるよ」 耳障りな二つの声。どちらも村へ出れば、よく耳にするものだった。 (不味いわね…こんな時に、こんなところで会うなんて…) 煌瑚は無視したが、それで諦めるようなら困りはしないのだ。 二人は煌瑚を挟むようにして歩いている。煌瑚は走って逃げようとした。 が、その瞬間に、青い髪の男― (…っ、んとに不味いわ…) 煌瑚がそう思った瞬間、煌瑚を引きずり込んだ男が呻き声を上げ、次の瞬間にはもう一人の男、共々倒れていた。 (・・・?・・・) 男たちの後方を見ると、見慣れた 「・・・由騎夜・・・」 「…大丈夫か、姉貴」 そう言って、由騎夜は煌瑚に手を貸してその場に立たせてやった。 「…何があったかは分からないけど、一人で夜の森に来るなんて…」 ひとまず、由騎夜はほっとしていた。 「どうして…いるの?」 煌瑚は訝しげに疑問をぶつけた。 自分はココに来ることを、誰にも告げてきてはいない。ましてや、由騎夜はあの時、宿にはいなかったのに。 「鎧綺が、出ていって帰ってきてない、って言うから心配で探しに来たんだよ。仮にも、女一人じゃ危ないし…それに…… 俺なら、多少、八つ当たりされて傷ついても平気だからさ…」 そんな言い方をしているが由騎夜は、自分を心配してくれていたのだ。 それが何だか、煌瑚には嬉しかった。 「・・・ありがとう、助かったわ」 煌瑚は素っ気無くお礼を言ったが、由騎夜にしてみればそれがいつもの姉の反応だったので一安心した。 「ところで。れんちゃんは誰といるの?」 「えっ・・・?あ゛…やばい、鎧綺と、二人かもしれない…」 「この馬鹿者!!早く戻りなさい、不味いわよ」 「でも…姉貴は?」 「私は、今夜は…戻りたくないから…れんちゃんを守りなさい、鎧綺から。さぁ、早く戻る!」 由騎夜は頷いて、先程の木の枝を煌瑚に持たせてその場を走り去った。 が、次の瞬間には、由騎夜は飛んでいた。 あとには、煌瑚が一人残された。暗い森の中で一人。 2010/01/26(past up unknown) ← → 煌綺羅 TOP |