煌く綺羅の夜 -第十一章 真夜中の静寂-


音が、何もなかった。
完全な静寂。
こんなことは、久しぶり…いや、初めてのことだった。
いつも何かしらの音を聞いていた。
心臓の鼓動。時計の針音。風のそよぎ。動物達の声。人の声。人の心。
眠っている時でさえ、いつも音を聞いていた。
小さい頃から、さまざまな音を子守唄に聞いていた。
何も聞こえないことがうれしくて、心地よく、ずっと、ここにいたいと思った。
ここにいれば、もう何も聞かなくてすむ。
ここにいれば、もう傷つくことはない。
ここで、ずっと、眠っていればいい。
『煌瑚さん』
声が、した。
静寂が破られ、少し不愉快になったが、この声は、何だかとても心地良かった。
今まで聞いてきた中で、一番優しくて、一番……好きな、声。
『はやく、起きてください。…………。煌瑚さん…』
それっきり、その声はもうしなかった。
もっと、聞いていたかった。
もっと、たくさん、もっと近くで、声を聞きたかった。
もっと……もっと、もっと、名前を呼んでほしかった。
(…ヨーシュ…)
銀の髪と、夜空色の瞳を持つ青年の姿を思い出す。
ここにいたら、もう二度と、彼の声を聞くことはできないだろう。
かわりに、持たらされるのは、一切の静寂。
音の世界に生きるか、静寂の世界に生きるか。
心は、もう、決まっていた。

2010/01/27(past up unknown)


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