Lighted Darkness
 −strange visitors−



―――彼女が背を向けて窓にもたれている。

ダークブラウンの長髪。細造りの身体。懐かしいシルエット。

そこで、気づく――あぁ、これは夢か。彼は呟く。

一緒にいても何をするわけでも、何かを話すわけでもない。酒でも入らない限りまともな会話はしていなかった気がする。

一番明確に憶えているのが、後ろ姿と―――。

夢を見ているとわかりかけながら、声をかけてみようかと、彼は思った。

声を発しようとした瞬間に、映像が変わった。

(また、これか)

見下ろした視界に、彼女の――背中しか見えなかった彼女の顔がある。

凄惨すぎるほどに、鮮烈で美しい。

わかっていながらも、吐き出すのは変わらない言葉。

(何故 何も言わない?お前を殺したのは・・・)

青ざめた彼女の唇がかすかに動き―――。

夢が終わる。


ため息と共に、イゼルは懐中時計を探す。
珍しくシャツを着たまま眠ったのがよくなかったのか、彼の中では悪夢に分類される夢見だった。
こういう時の方が頭がすっきりと働く事も彼の不機嫌を煽る。
本当の夢・・・・ ならば、こうして冷静でいられることはおかしい。正常ではない。
(・・・・・・戒め、か・・・)
忘却に対する罪の意識。彼女・・ 、或いは過去の死を忘れるな、という戒め。
ちがう、と否定する声がした。
これは別、と何かが告げる。
(と、いうことはつまり、)
結論はごく自然に帰着した。
「―――警告、か」
低く、低い呟きが洩れる。



20100215(20060616) writer 相棒・竜帝


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