Lighted Darkness
 −contact point−



少々時間は遡るが、サラ達はシリィの今夜の宿泊先、サラの叔父の家、つまりはラコステに来ていた。
「ほう、そうかい、そうかい」
ゲイルは珍しい小さな来客の話を熱心に聞いている。
サラは荷物を置きに行きながら、今夜の寝床―屋根裏部屋にいた。
シリィを迎えに行く前に、天日干しにしておいた寝具類を整える。
整え終わってから、サラが店に行くとシリィがロバートと楽しそうに話をしていた。と言っても、ロバートがシリィにからかわれているのは一目瞭然であった。
「シリィ、何か食べる?」
サラがシリィに尋ねると、シリィは少し考えてから、つぶやくように言った。
「・・・オムレツ・・・」
「オムレツ?他は?」
「他はいらない」
「サラ、オレも食べたい」
「わかった」
サラは卵を割りながら、ロバートに言った。
「ロバート…シリィを壁際に移して、その隣に座ってくれ」
シリィはきょとんとしていたが、サラの言わんとすることを理解したロバートはシリィの両脇を抱えて、移動させた。
「自分で移動できたよ?」とシリィはロバートに言ったが
「いいの、いいの」とロバートは返して、自分のグラスを持ってシリィの隣に腰をおろした。
そうこうしているうちにサラが二人の前にオムレツののった皿を出してきた。
「シリィの口に合うかどうか、わからないけど…」
「サラは料理上手なんだぞー」とロバートが横から口を挟む
シリィは食べていい?と問うようにサラを見た。
「どうぞ」とサラは微笑む。
「いただきます」
シリィが一口食べると同時に、ロバートも自分のオムレツを口に運ぶ。
「おいしい!」
「ん。うまいな」
「そう、よかった」とサラが言った時、郵便が届いた。
ゲイルが郵便受けから手紙を持ってくる。
「これは俺…これも…かみさん…ん?サラ?」
サラはゲイルの方を見る。シリィとロバートはオムレツを食べるのを止め、同様にゲイルを見た。
「これ、サラ、お前にだ。でも、なんでここに届くんだ?」
と、ゲイルに渡された手紙には、確かにサラの名前が書かれていた。しかし、どこにも差出人の名前らしきものはない。
とりあえず、サラは封を開け、手紙を取り出した。
一行読んでサラは凍りついた。そんなサラを不思議に思ったシリィがその手から手紙をもぎ取り、声に出してそれを読み始めた。
「えーっと、麗しい僕のサラへ=cキモチ悪い」
「おい、おい(汗)」
「僕は一目君を見て恋に落ちてしまった=c一目惚れ?」
「いちいちツッコむな!」
苦笑いでそう言うロバートを一瞬睨むとシリィは続きを読み始めた。
「君のその柔らかそうな髪に触れ、そっとその唇に触れてみたい
 いつも僕の側にいて、そして微笑んでいてほしい
 君のその柔肌に包まれたなら、どんなに幸せだろうか
 君と僕とは出会うべくして出会った運命の恋人なんだ
 近いうちに逢いにゆくよ
  僕の愛しいサラへ        君の最愛の恋人より
 追伸 僕はいつでも君の側で君を見守っているよ
 …だって、キモチワルイ…」
「・・・サラ?大丈夫か?」
ロバートが青白くなっているサラに問いかけた。
「・・・ゲイル・・・」
「な、なんだ?」
「み、…水…」
ゲイルは冷たい水をサラに渡す。サラは一気にそれを飲んだ。
「サラぁ、いっつもこんな手紙もらうの?」
シリィは少し落ち着いた様子のサラに訊いた。
「そんなわけないだろ…」
「変質者は殺人者よりも手に負えないからなぁ…気をつけた方がいいかもな」
「・・・まあ、気紛れだと思うから・・・」と、サラが手紙を破こうとしたとき、ロバートがそれを止めた。
「サラ、破くのは待て。俺が大事にきっちり、しっかり、保管しといてやるから」
「・・・何のために?」
「まあ、いいから」
そう言ってロバートはサラから手紙を受け取り、ジャケットの内ポケットに仕舞いこんだ。
「ロバート?オムレツ食べていい?」
シリィは自分の分を食べ終え、ロバートの返事を待たずにロバートの分まで食べていた。
「あ、おい!シリィー!!」
「・・・ック、ロバートあとで別なもの作ってやるよ」
可笑しそうに、笑ったサラの言葉にロバートはうな垂れながら「うん」と小さく答えた。


20120123(20060721) writer 深飛



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