個性など無いと言う、そうやって自分を護るのかい?-Lighted Darkness-



彼女はある時から感情を表に出さなくなった。
もともと無口なことも加わって、彼女の思いに気づけるのは、
彼女のごく身近な人物だけになった。

「…サラ」

そう声をかければ。
返ってくるのは、すべて諦めてしまったような、冷たい視線。

「少しは、昔みたいに自分を出したらどうなんだ?」

月明かりだけの彼女の部屋。
年頃の女の子には有り得ない、殺風景で何もないその部屋で。
俺は彼女と向き合っていた。

「…そんなことして、どうなる」

その声色に、未だ姉を失った悲しみが癒えてないことを知った。
それでも…。

「…クレアが、」

そう、彼女の姉の名前を出せば。彼女の小さな肩が微かに揺れた。

「今の状態のサラを見たら、何て言う。アイツは」
「ジャンに何がわかる!!」

滅多に声を荒げない彼女が、俺の瞳を見て、そう叫んだ。
その瞳に映るのは、悲しみと絶望と、…怒り。
「…ごめん…でも、放って置いて。あたしなんか一人くらい」

そこまで聞いて、俺は我慢が限界に達した。
気づいたら、ダンッと壁を拳で叩いていた。

「人形みたいにそうやって、自分なんか無い、個性なんか無いって、そうやって自分を護るのか?」
「‥‥ッ!!」
「もっと自分を出せばいい、昔みたいに…少なからず、俺の前では。
 仮にも幼馴染みなんだ、お前一人支えられないで、どうする」
「…ジャン」
「…わかったら、我慢はやめろ。俺はお前の側にいる。これからもずっと」

俺のその言葉と共に、今まで気を張っていた彼女は子供みたいに泣きじゃくった。
その姿に、息をついた俺はそっと彼女を抱きしめた。
今はまだ無理でも、いつか昔のように笑ってくれたら、と思いながら。



20100121(20070316)
個性など無いと言う、そうやって自分を護るのかい?

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