告白 シリーズ咲智+修斗



修斗はここ数日、ソワソワしていた。
それは、誰の目から見ても明らかで、咲智も修斗の態度が気になっていた。

「 大橋くん、最近どうしたんだろうね 」

6月のある日。学校祭の準備で日増しに忙しくなっているある昼休みのことだった。

「 なに、咲智、修斗が気になるの? 」
「 え、まぁ… 」

ニヤニヤしながら聞いてくる哉子に咲智は照れたように答えた。

半年ほど付き合った彼に振られてからの咲智は何となく、元気がなかった。
その咲智が最近なんだか楽しそうにしていたから、哉子はもしや…とは思っていたのだが。
まさか、その相手が野球部の後輩、修斗だとは思ってもいなかった。

「 そっかぁー…修斗かぁ…いいんじゃない?あの子優しいし 」
「 そう思う? 」
「 うん、たださぁ?学園のマドンナが1年坊主にさらわれた、なんて日には… 」
「 だから、その言い方やめてって言ってるでしょ? 」
「 事実なんだから仕方ないじゃない?いやーでも…咲智が修斗をねぇ… 」

修斗に今月の自分の恋愛運は?と聞かれて、いくらも経ってない今日、咲智からの告白。
哉子は修斗と咲智は出会うべくして出会ったのでは、と一人思っていた。




それから数日たったある日。
咲智は生徒会の仕事で帰りが遅くなってしまった。
緑丘西高校の学校祭は夏休み直前にぶつけて行われるので、6月の下旬にもなると、生徒会はバタバタ忙しくなるのだった。

「 あーぁ、もうこんな時間…けど、だいぶ日が長くなったなぁ… 」

一人、生徒玄関で靴を履き替えて、咲智はポツリと言葉を洩らした。
すると、そこへ、最近好きになったと自覚した後輩が現れた。

「 あれ?咲智先輩? 」
「 あ、大橋くん! 」

咲智は嬉しさのあまり、つい声が大きくなってしまった。
我ながら単純だなと思い、誤魔化すように咲智は微笑んだ。
そんな咲智に修斗は、思いもよらない言葉をかけた。

「 先輩、こんな時間まで何してたんすか? 」
「 え、学祭が近いから生徒会の仕事だよ 」
「 あぁ…なるほど。うちの学校って花火盛大なんすよね?哉子先輩が毎年凄いわよ〜って 」
「 そうそう、一番お金かけてるからね。大橋くん、今から帰るの? 」
「 はい、先輩もすよね?送りますよ、俺 」
「 えっ?! 」
「 え、ってそんなに驚かなくても 」

修斗のツボに入ったのか、修斗は声を出して笑っている。

「 もう、そんなに笑わなくても… 」
「 すいません、先輩の反応、可愛くて 」
「 え?可愛いって… 」

修斗の言葉に咲智は、自分の顔がだんだん熱を帯びていくのがわかった。
すると、修斗は突然、真面目な顔をして咲智を見た。

「 先輩… 」
「 な、なに? 」

その真剣な口調に思わず、咲智はどもってしまった。

「 俺…もう我慢できないです 」
「 …? 」

何がだろうと、咲智は首を傾げる。

「 ほんとは、学祭の花火の時にジンクスに懸けて言おうと思ったんですけど
  俺、先輩が好きです!年下だし、頼りないとこもあると思うけど…
  前に先輩の元気ない姿みて…俺、先輩のこと支えたいって思って…
  俺の彼女になってくれませんか!! 」
「 大橋くん… 」

咲智には今それしか、言葉が出てこなかった。まさか、自分が好きになった後輩が
同じように自分を好きになってくれているなんて、思ってもみなかったのだ。

「 やっぱり…だめすかね? 」

名前を呼んだきり、反応を示さない咲智に修斗は恐る恐る声をかける。

「 ううん、私も大橋くんのことアレから好きだったの… 」
「 それじゃあ… 」
「 うん、これから、よろしくね? 」
「 やったぁぁ!! 」

修斗は嬉しさのあまり、咲智を力いっぱい抱きしめていた。
さすがに咲智もそれには驚いて、修斗に問いかける。

「 お、お、大橋くん!? 」
「 あ、すいません…嬉しくて、つい… 」
「 ううん、びっくりしただけ 」
「 先輩、好きですよ 」
「 うん、私も…好き 」

咲智の言葉に修斗が微笑み、つられて咲智も微笑んだ。

「 それじゃ、ほんとに帰りましょうか? 」
「 そうね 」

二人は咲智の家に向かって歩き出した。

「 そうだ、先輩。あの… 」
「 なに? 」
「 大橋くん、て呼び方変えてもらえませんか? 」
「 え、いいけど…嫌だった? 」
「 いや、付き合ってからも大橋くんじゃ、他人行儀かなって 」
「 そうね…じゃあ、何て呼ばれたい? 」
「 え、あの、それは…先輩が考えてください 」
「 わかったわ、あ、それじゃ、私からも一つ 」
「 なんすか? 」
「 二人でいるときはなるべく、敬語はなしね?他の人がいたら、そうも言ってられないだろうけど… 」
「 わかりました…あ、…うん、わかった 」

そんな修斗に咲智はクスクス笑いながら、
年下の彼も案外いいかもしれないと、微笑むのだった。



 20100113 [20051121]

告白編。
ほんとは、告白までの心境の変化とか先に書くべきなんだろうけど。

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