「声を聞きたい」 シリーズ有麻+和幸



有麻と和幸はしばらく会っていなかった。
有麻はテスト期間で、和幸は出張で九州に行っていたから。


「ねぇ、お兄ちゃん」
有麻は帰りが久しぶりに早かった雅嗣を捕まえて声をかけた。
「んぉ?ただいま」
「お帰りなさい。それより」
兄が久しぶりに早く帰宅したことも、今の有麻には「それより」と軽く流してしまうことで。
「和くん、いつ出張から戻ってくるの?」
「あ〜・・・」
と言いながら、雅嗣は鞄から手帳を取り出しスケジュールを見る。
「来週の月曜日だな」
「え〜〜!!!嘘っ!?あと6日も待たなきゃいけないの?!」
有麻は見るからに項垂れてしまった。
「電話してみたらいいだろ?10時くらいなら、大丈夫だと思うぞ?」
「ほんと!!わかった、ありがとう!!お兄ちゃん!!」
そう満面の笑みで答え、有麻は2階の自室へと向かっていった。



--------PM10:05
有麻はベッドに肘をついて、うつ伏せの状態で携帯のメモリーから掛けなれた番号を呼び出す。

Truuuu―truuuu―
4回目のコールで待ちわびた相手が出た。
「もしもし、有麻?」
「あ、和くん」
有麻は和幸が電話に出たとたん、顔の筋肉が緩むのを感じた。
「どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃ、ないでしょ!!出張に行くとは聞いていたけど、来週の月曜日に帰ってくるなんて聞いてないよ」
「あれ?言ってなかった?」
「聞いてないよ〜〜」
「そっか、ごめんな」
「テストが終わったから、やっと会えると思ったのに出張なんだもん」
「ごめんな、急にこの出張と次の出張、変わってくれって頼まれてさ」
「そっか、それなら仕方ないね。・・・でも、声聞けてよかった♪♪」
「ん?」
和幸は有麻の言葉に疑問を浮かべた。
「なんだ、有麻、俺の声が聞きたかったのか?」
「そうだよ、だって最近は連絡、メールでばっかりだったし」
「そっか、そしたら掛けなおすよ」
「うんっ♪♪」

その後、0時過ぎまで会話は弾んだ。



 20100113 [20041108]

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