あなたの微笑み シリーズ咲智+修斗



咲智はその日、お昼から何も手につかず、気分転換のために近所の公園に来ていた。


『 俺たち、別れないか 』
『 えっ…? 』
『 俺もお前も忙しくて時間取れないし…それに俺、この前仲良い後輩に告白されてさ 』
『 …そっか…、わかったよ 』
『 ごめんな?俺のわがままで 』
『 ううん、仕方ないよ。正直に言ってもらえて、よかった… 』
『 それじゃ、元気でな?お前のことは嫌いになったわけじゃないから 』
『 うん、…優一も元気でね 』


先程のやりとりが頭の中で、何度も繰り返し流れた。
終わってしまったことを、うじうじ考えてしまうのはどうかと思う。
だが、こればかりは仕方ない。
別れた男とは同じ中学で比較的、仲も良かった。
昨夏、夏祭りで久しぶりに会って、しばらくしてから告白された。
一緒にいるにつれ、思いの外、その気持ちは強くなっていたようだ。

自分の思考に捕われていた咲智は自分に向かって、人が歩いてきていることに気づいていなかった。

「 安藤先輩? 」

驚いて顔をあげると、そこにはつい一ヶ月程前に知り合いになった後輩・修斗の姿。

「 えっ?…あ、大橋くん 」
「 どうしたんですか?いつもの元気がないですよ? 」
「 大橋くんこそ。どうしてこんなところにいるの? 」
「 俺は散策してたんですよ、学校周辺を。…で、先輩は何してたんですか? 」
「 え…あ、うん…ちょっとね… 」

修斗に話してもいいものかどうか、咲智は迷った。まったく関係のない話に加え、知り合ってまだそれ程経ってもいない後輩に話すにはどうかと思われたから。
しかし、咲智が考えているうちに、修斗は空いている咲智の横へと腰かけて、そして、ゆっくりと咲智のほうを見て笑顔で口を開いた。

「 何か悩みごとですか?話くらいなら聞きますよ?誰かに話して楽になることもあるし 」

修斗の笑顔は不思議と、人を惹きつけ元気にさせるのか、咲智はつられていつものような笑顔になった気がした。

「 情けないなぁ… 」

咲智の洩らした言葉に、修斗が疑問の声をあげた。

「 え? 」
「 だって、四月に入学してきたばかりの下級生に心配されちゃうなんて 」

咲智はその自分の言い方に少し後悔し、自嘲気味に笑った後、ポツリと言葉にしていた。


「 あたしね…さっき、フラれちゃったの… 」
「 えっ…!? 」


咲智の言葉は修斗の想像していたものとかけ離れていたのだろう。驚いた声をあげ、固まっている。
そんな修斗を気にせず、咲智は言葉を続けた。

「 ハハハ、だからさ、何でこうなっちゃったんだろう…って、考えてたところだったの 」

修斗は、何も反応しなかった。
実際は違うのだが、そんな修斗に咲智は不味いことを言ってしまったと思い、慌てて言葉を紡ぐ。

「 あ、ごめんね?何か重たい話しちゃって 」

咲智の言葉に、今度は修斗が慌てたように口を開いた。

「 いえ…そんなことはないですけど、びっくりしました… 」

それを聞いた咲智は、そっか…と言って、ベンチから立ち上がった。

「 うじうじ考えてても意味無いわよね…もう、気にしないことにするわ 」

そう言った咲智に修斗は思ってもみなかった言葉をくれた。

「 …無理して忘れる必要はないと思います…俺でよかったら、愚痴くらいいくらでも聞きますよ! 」

その言葉が思った以上に嬉しくて、咲智は気持ちが軽くなった気がした。

「 ありがとう、大橋くん 」


これがきっかけで、修斗とより近づくことになるとは、この時の咲智はまだ知らなかった。



 20100113 [20051114]

シリーズ第三弾。
今思うと、私も後輩とレンアイしておけばよかったかと(笑)
中高生の頃は年下、嫌だったんですけどね(笑)
side修斗 / 公園

Special thanks:+smile smile+

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