傘 シリーズ咲智+修斗



その日は朝の天気予報で既に、午後からは雨が降ると言われていた。
毎朝きちんとニュースと天気予報をチェックする咲智は迷わずに、折り畳み傘ではなく、普通の傘を持って家を出た。


学校の校門付近で修斗の後ろ姿を発見した咲智は、自然と駆け出す。

「 修くん! 」

呼ばれた修斗は振り返り、咲智の姿を認めた途端、笑顔になった。

「 咲智先輩!おはようございます 」
「 うん、おはよう。今日は朝練は? 」
「 今日はないっす。だからこの時間 」
「 そっか。あ、ねぇ今日雨降ったら部活は休み? 」
「 そうっすよ?あ、一緒に帰ります? 」
「 うん、帰りたいなぁ〜なんて 」

二人は昇降口の目の前まで来ていた。

「 じゃあ、雨降ったら昇降口で待ち合わせってことで 」
「 うん、降らなくても…待とうかなぁ…いい? 」
「 もちろんっすよ 」

修斗は嬉しそうに咲智に微笑んだ。
咲智もそれを見て安心したように微笑む。

「 それじゃあ、また放課後にね 」
「 はい! 」

そう言って二人は別れた。


教室についた咲智を待ち構えていたのは親友の哉子だった。

「 おはよ〜。見たわよ?ったく、朝っぱらから何ラブラブしてんのよ? 」
「 別にラブラブなんてしてないけど…仕方ないじゃない?学年違うし部活も違うし。会えるだけで嬉しいのよ 」
「 そ〜ぉ。青春ねぇ〜 」
「 なによ、自分だって同じでしょ? 」

咲智の言葉に哉子は照れたように笑った。


そして。
その日は天気予報の通り、お昼から雨が降ってきた。
咲智がこれで帰りは確実に修斗と一緒に帰れると、嬉しくなったのも束の間。
お昼の放送で放課後、急遽、生徒会執行部の召集が言い渡された。
生徒会副会長である咲智はもちろん集まらなければいけなくて。

「 もぅ、ありえない…せっかく一緒に帰れると思ってたのに… 」
「 たまには修斗に待っててもらうのもいんじゃない?? 」
「 ……… 」
「 なに、どしたの?あたし何か変なこと言った? 」
「 ううん、哉子にしてはイイ事言うと思って 」
「 失礼ね、あたしはいつもイイ事しか言ってないわよ 」
「 はいはい、そうね 」


そんな風に今日も一日が終わって放課後。
咲智は修斗が待っているであろう昇降口に向かった。
待っていて、と言うために…。

「 あ、咲智先輩! 」

先に声をかけたのは修斗だった。

「 あ、修くん…ごめん、今日のお昼の放送聞いて、た? 」
「 あぁ、聞いてましたよ?今日は俺が待ってます 」

修斗は笑顔でそう言った。
咲智はまさか、修斗から言ってくれるなんて思ってもいなかったので、嬉しさで笑顔になった。
じゃあ、と咲智が修斗に何か言いかけた時。

「 あぁっ!!?傘入ってない!!! 」

そんな声が二人のすぐ近くで聞こえた。
二人は声のした方を見る。そこには一人の女子生徒。

「 何だ、中野、傘忘れたのか? 」
「 あ、大橋!! 」

それは修斗のクラスの女子生徒であった。

「 男物でも良かったら、俺の傘貸してやるけど? 」
「 え?でも大橋は?傘なかったら濡れるじゃん 」

そんな彼女の言葉に修斗は咲智を見る。
咲智も何かと修斗を見る。

「 俺は彼女に入れてもらうから大丈夫 」
「 なっ、修くん! 」
「 え!?副会長って大橋と付き合ってるんですか!?あらら……じゃ、大橋、傘貸して? 」
「 おう、ほらよ 」

そう言って、修斗は自分の折り畳み傘を差し出してやる。
女子生徒は二人が付き合っているということに驚きながらも、ちゃっかりと傘を借りた。

「 ありがとう、じゃあ、先輩さようなら 」
「 え、あ、さようなら…気をつけてね 」

彼女は二人に(おもに咲智に)会釈して帰っていた。

「 びっくりした… 」
「 そう?俺狙ってましたけど?相合傘 」

そう言って修斗は笑う。咲智の大好きな笑顔で。

「 もう…あ、そろそろ行かないと… 」
「 はい、行ってきて下さい?俺、教室で待ってるんで 」
「 うん、じゃあまた後でね? 」
「 はい、先輩?好きですよ 」
「 あたしも 」


雨の日も案外いいものかもしれないと思いながら、咲智は生徒会室へと急いだ。



 20100113 [20051217]

ほんとは、傘を貸したことによって嫉妬ネタに走る予定だったんですが。
お昼の放送ネタを勝手に指が打ち込んでいたので、この流れに。笑。
相合傘スキです。
Special thanks:+smile smile+

恋愛小説好きに50題
inserted by FC2 system