煙草の香り シリーズ有麻+和幸



カツ、カツ、カツ――

コン、コン。

「入るわよ」

女は、室内の許可も待たずに部屋に入った。


「相変わらず、煙たい部屋ね」

そう言って、換気をするために自動窓のリモコンを持つ。

ピッ、ピッ。

部屋の住人は何も言わずに、女の行動を深く椅子に腰掛け見ている。

「最愛の女が来たっていうのに、反応はないわけ?」

少し挑発的な態度で、男―部屋の主―が座る椅子の前にあるデスクに女は足を組んで腰掛ける。

「何だ、反応して欲しかったのか?」

男は吹かしていた煙草をデスクの上の灰皿においた。

そう言って、強引に女の身体を引っ張り自分のほうに引き寄せた。

「――んっ」

男の強引な口付けに、

女が声にならない声をあげる。



「煙草の香りが残ってるキスもいいだろ?」

そう男は呟き、女は肯定の返事のかわりに

もう一度、自分から口付けた。



 20100113 [20040916]
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