春 シリーズ咲智+修斗



二人の出会いは――春。
まだ冬の名残を感じる三月。



「 やっべぇ…、俺迷った? 」

新学期から晴れて通うことになった緑丘西高校。
修斗は、中学時代からの先輩達に声をかけられ、野球部の見学に来ていた。
しかし、校舎とグランドは土地の関係で離れたところにあり、隣町に住む修斗は校舎からグランドに行く途中で迷ったことに気づいた。

「 どうすっかなぁ…先輩達は部活中で連絡つかないだろうし… 」

修斗が困っていったん、校舎に引き返そうと体の向きを変えた時。
前方から、緑丘西高校の制服を着た女生徒が歩いてくるのが目に入った。
基本的に、人見知りしなく人懐っこい修斗は、迷わずその女生徒に声をかけた。

「 あの!すみません! 」

女生徒は立ち止まり、何かと首をかしげた。

「 どうかしましたか? 」
「 あの、俺、春から丘西に通う大橋 修斗っていうんですけど、丘西の生徒さんですよね? 」
「 えぇ、そうですけど 」
「 あぁ、よかったぁ。俺、野球部の練習を 」

修斗がそう言った時、何を言いたいか、わかったらしいその生徒が口を挟んだ。

「 グランドに行くのに迷ったかしら? 」

そう言って女生徒は柔らかく微笑んでそう言った。
一瞬、その微笑みに見惚れてしまった修斗は、慌てて頷く。

「 あ、はい!そうなんです… 」
「 ちょうど良かったわね。私も今からグランドに行くところなの。一緒に行きましょ 」

そう言って、女生徒はまた微笑む。
見れば、手には二リットルのスポーツドリンクのペットボトルが数本入ったビニール袋。

「 ありがとうございます!!俺、それ持ちますよ! 」

言いながら、修斗は女生徒の手から袋を取り上げる。

「 ありがとう、結構、重たかったの。あ、私、四月から三年の安藤 咲智。よろしくね、大橋くん 」
「 はい!よろしくお願いします、安藤先輩! 」




グランドに到着した二人に一番最初に気づいたのは、野球部マネージャーの大西 哉子だった。

「 あら?咲智と修斗、一緒だったの? 」
「 哉子先輩!! 」

修斗が笑顔で哉子に駆け寄る。二人は中学時代にも野球部の先輩後輩の関係だった。

「 あ、もしかして中学時代の後輩くんだった?あ、大橋くん、差し入れあげてくれる? 」

咲智はそう言いながら二人に近寄った。

「 あら、悪いわね。咲智。修斗も来たから一回休憩いれようかな 」

哉子はそう言いながら、修斗から貰った袋をベンチに置き、守備練習をしていた部員に向かって叫ぶ。

「 ラスト五本で休憩ー!! 」

その様子を見ながら修斗に咲智が話しかけた。

「 哉子と同じ中学だったのね 」
「 はい!先輩にはすっごい世話になってて…安藤先輩はお友達ですか? 」
「 えぇ、高校に入ってからの親友よ 」
「 そうなんすか 」

そこへ、休憩に入る部員たちが戻ってきた。
中学時代から修斗を知る何人かが、二人のもとにやってくる。

「 おいおい、修斗〜もう、うちの学校のマドンナと知り合いになったのか〜? 」
「 手ぇ早いって!! 」

笑いながら、そんなこと言う先輩たちに修斗は慌てふためく。

「 ええ!?俺なんもしてないっすよ〜!!しかも、マドンナって! 」

修斗は咲智を見るが、咲智は照れたように微笑んだだけだった。
そこに、タオルとドリンクを持った哉子がくる。

「 そうだったわ、修斗。咲智は2年連続ミス丘西だからね?ほれ、お疲れ〜 」

そんなことを言いながら、部員にタオルとドリンクを配る哉子に、自分も手伝うと
咲智もタオルとドリンクのある方に向かい、まだ手にしていない部員たちに配って回るのだった。



それが、二人― 安藤 咲智と大橋 修斗 ― の出会い。



 20100113 [20051113]

高校生カップルを書きたくて、この2人の登場です。
あ、ちなみに管理人、野球にはまったくもってうといですから
その辺りは大目に見てくださいね。
Special thanks:+smile smile+

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