無防備な笑顔 -Lighted Darkness-



この先ずっと・・・
彼女の傍にいたいと思う
やっと手に入れた
光だから・・・



いつからこんなに彼女のことが愛しくなっていたのか・・・
いつでもその傍らでその笑顔を見ていたいと思う…

「…明日、買い物に付き合ってくれないか…」

一人でラコステに来ていたイゼルにサラはそう言った。
もちろんイゼルには断る理由もないので快く承諾した。


―翌日―
待ち合わせは、二人の始まりの場所になった孤児院だった。
サラが孤児院に着くと、すでにイゼルは来ていて、
院長とまったりお茶なんかを飲んでいたり。

「こんにちは、シスター」

「いらっしゃい、サラ。貴女もどう?美味しい紅茶をいただいたの」

にこりと微笑みながら言うシスターにサラも微笑む。

「サラ、…今日は何を買いに?」

紅茶を飲みながら、隣に座ったイゼルが訊いてきた。

「あ…えっと、…布を…」
「布?」

いつだったか、シェルシーナとロバートのスーツに関してからかったことがあった。

「ロバートのスーツがよれよれだと、シリィと話したことがあって…」
「あぁ、確かに…」
「それで、一着仕立ててやろうかと思って…」
「・・・」
「・・・」

イゼルは意外と妬きもち焼きなのか妙な沈黙が続く。

「・・・それで、嫌でなければ・・・その、ドクターの分も・・・」
「えっ?」
「いや・・・、その・・・」
「嬉しいな」

そう言ってイゼルは微笑んだ。
その顔を見てサラは安堵するとともに勇気を出して言って良かったと思った。


二人はサラ行きつけの手芸店に来ていた。

「おや、サラ?」
「あ、リンダ…」

リンダと呼ばれた熟年の女性はイゼルを品定めするように見入る。
イゼルは終始にこやかにそれをかわす。

「…サラ、男見る目あるじゃないか」
「え?」

言われたサラは一瞬イゼルを見て、それから赤面俯いた。

「ま、ゆっくりしていきな」

ぶっきら棒にそう言うとリンダは店の奥へと入っていった。

サラは目的の質の布がある棚の前に来ると、嬉しそうに微笑みながら布を選び始めた。
布を出しては考え仕舞っては出し、を繰り返している。
そんなサラの無防備な笑顔を見ながらイゼルが言う。

「こんな日が来るなんて思わなかったよ」
「え?」
「以前はふとした時にしか笑顔を見せてくれなかったから…」
「…ドクターは…いつも作り笑顔だったけど…?」
「痛いトコはつかないでくれ」

イゼルは苦笑する。

「サラ…?」
「…?…」
「いつでも傍で笑っていてほしい…」
「うん」

一段と優しい笑みを浮かべてサラは頷いた


2010/01/21(20050905)
どきりとする10のお題[2]:創作者さんに50未満のお題
親友の竜帝に捧げる。


LD TOP 創作者さんに50未満のお題より

inserted by FC2 system