髪をかきあげる仕草 -Lighted Darkness-



色々あったが…イゼルとサラが付き合うようになって早一ヶ月
今までと何が変わったわけでもない……とも言いきれず
だが、イゼルがロバートとラコステに来るのは変わっていなかった…



それはいつものように飲んでいた時のこと
何気ないロバートの一言がきっかけだった

「なぁ、イゼル」

イゼルはまたロバートの下らない話が始まるのかと
目線だけでその先を促す…しかし

「サラ…お前と付き合うようになって、色っぽくなったよな…」

イゼルはロバートの言葉に目を見開き、ロバートの顔を見た
ロバートはしごく真面目な顔をしてサラを見ている
そのサラはというと、他の常連客を相手に淡々と仕事をこなしていて
今の言葉が聞こえた様子はない
イゼルは一瞬、自分のカウンターに置かれた手元を見て
それから視線をサラに移した
確かに…以前の、自分と付き合う前の彼女と比べると
色っぽくなったとは思う
それが単にサラの外見からくるものなのか
それとも内面からくるものなのか、イゼルには判断しかねた
そもそも、最初に知り合った時にはショートカットだった髪も
今は肩にかかるくらいまでに伸びていて
それでいて自分の恋人なんだから
自分には、色っぽく見えてしまうのは当然だろう、とイゼルは思った
すると、サラが視線に気づいたように、こちらにやって来た

「どうしたんだ?二人とも…」

サラの口調は、イゼルと付き合いだしてからも変わることはなく

「ん?サラ、イゼルと付き合うようになってから色っぽくなったよな、って話してたんだ」

と、ロバートがイゼルに視線を向けて答えた
ロバートの言葉を聞いたサラは、顔を真っ赤にして二人に向けていた視線を泳がせた
イゼルも軽く咳払いをして、ロバートの言葉をごまかす

「なーに、二人とも照れてんだ?いいじゃないか、別に。男が出来て女の子が綺麗になったり、色っぽくな…い゛っ…」

そこで、ロバートの言葉は途切れた
いつものごとく、イゼルがロバートの足を踏んだのだ

「サラ、すまない」
「えっ…あっ……うん…」

何故か、謝罪の言葉を発したイゼルに
サラは顔に流れ落ちてきた髪をかきあげながら、戸惑いの返事を返す…
その仕草を見た瞬間
イゼルが、ハッと息をのんだ
今まで、こんなにサラのことを色っぽいと思ったことはあっただろうか
色素の薄い赤茶色の、柔らかな髪が
サラのその白い手によってかきあげられただけの仕草が・・・
こんなにも色っぽいなんて・・・
イゼルがサラをじっと見つめて黙ってしまったから
不審に思ったサラが声をかけるが

「イゼル?どうしたんだ?」 
「…あっ、いや・・・」
 
彼らしくないなんとも、歯切れの悪い答えにサラは首をかしげる
それを見ていたロバートが・・・

「・・・サラ?」
「ん?」
「こいつ、今サラのこと、すっごい色っぽいと思って、感じちゃったわけだよ」
「なっ…!!」「ロバート!!」

サラとイゼルの言葉が重なった
サラは一瞬、イゼルを見て恥ずかしさのあまり
他の客のもとへと行ってしまった
そんなサラを見ながら、ロバートはニヤニヤ笑い
イゼルに頭突きを喰らったのは、また別の話・・・

2010/01/21(20050721) 20110928微修正
どきりとする10のお題[3]:創作者さんに50未満のお題


2010/01/21(20050905)
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親友の竜帝に捧げる。


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