絡めた指



『ちょっと、ジェイド様はどこー!!?』


放課後になるといつもこう。女子生徒たちの群れが彼女を探して右往左往。
そんな彼女たちを撒くことに成功したジェイドは西校舎の三階の一番端の部屋にいた。
部屋といっても、今は使われなくなった資料やら機械類やらが放置されている用具庫。
誰もそんな汚い場所にジェイドがいるなんて思うはずもなく。
(なにせジェイドは強く気高く美しく、と彼女たちに思われているのだから)


「…さすがに、ここは見つからない、か…」


ジェイドがそう息を吐いたのも、束の間。
ガラリ、と用具庫の扉が開かれた。
ジェイドは入ってすぐの壁にずるり、と腰をおろしていたので一瞬、反応が遅れたが。


「ここに、いたのね。…ジェイド」


聞こえてきた声に安堵の吐息を洩らした。


「…ファリアか…驚かせないでくれ」


ジェイドの言葉にファリアはクスクス笑って、腰をおろしているジェイドのその隣に腰をおろそうとした。


「ファリア…!待って!!」
「え?」


片膝を立てて座っていたジェイドは言うや否や、ファリアの手を掴んで自分の大腿部に横向きに座らせた。
そして、真横からぎゅっと抱きしめた。


「…ジェイド?」
「そのまま座ったら汚れてしまうだろ…」
「じゃあ、ジェイドは?」
「私は構わない…少しこのままで…」


ファリアは自分を抱きしめるジェイドの右腕を外すことなく、その上からジェイドの髪を撫でた。
何か、あったのだろうか…。それでもジェイドが口を開くまで何も訊かない。それが二人の信頼の証。

どのくらいそうしていただろうか。
ふいに、ジェイドがその右手で自分を撫でていたファリアの右手を掴んだ。

不規則に絡まる指先に、ファリアはどうしたのかとジェイドに視線を向ける。
ふいに絡まった視線に、思わずファリアは視線を外そうとした。
が、それはジェイドの左手によって頭部を固定されてしまって叶わなかった。


「…ファリ…」


極近くで囁かれた名前が全て紡がれる前に、ファリアはジェイドをその身で感じていた。
次の瞬間には、何も考えることをせず目蓋を閉じて――


 2010/01/29 [20061108]

どきりとする10のお題[4]:創作者さんに50未満のお題
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創作者さんに50未満のお題より

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