ある家族の話。―父と(ちょっと成長した)息子の話― 「 ねぇ、父さん 」 「 なんだ? 」 「 父さんは母さんのどこに惚れたの? 」 「 ・・・ 」 息子の言葉に父固まる。 「 ねぇ、父さん!!黙ってたってわからないよ!! 」 「 ど、ど、どうしたんだ、急に… 」 父、息子にかなり動揺。 「 え、いや〜鎧綺さんが… 」 「 …アイツが何だって 」 兄の名前が出て、父はちょっと不機嫌。 「 俺が、蓮夜の母さんだけは父さんに譲ってやったんだよ。 あいつが本気で惚れてたから≠チて、昨日言ってたから 」 「 …(はぁ〜)」 「 なんで、そこで溜息つくんだよ!! 」 「 アイツの話を真に受けるなよ 」 「 なんだよ、それ!! 」 「 お前にも心から大事にしたいって想う相手が出来たときに 父さんと母さんの恋の話をしてやるよ、それまでは秘密だ」 そう言って珍しく父は笑った。 母との恋のなれそめは、子供たちと同じくらい大事な 父の宝物だから、時期が来るまでもう少し 大事にしまっておこう。 息子に、父が母を想うくらい大事にしたい女の子が現れるまで。 |