言う事きけないの?-Lighted Darkness-



雨がシトシト降る中
あたしが向かった先は今夜の獲物が居るはずの場所



―カランカラン
乾いた音を響かせベルが鳴る
酒場独特の雰囲気に不釣合いな―女の姿
女―クレア―は目的の人物 今夜の獲物を確認すると
迷うことなく そこに足をすすめる

「隣いい?」

声をかけられた人物―ロバート・マクイーン―は
声をかけてきた人物をみて 驚きに一瞬固まる

「・・・あぁ 俺に何か…用事でも?」
「えぇ これから時間ある?」

ロバートは さてどうしたものか と考える
なにせ相手は業界じゃ有名な―クレア・ショールズ
"死神の娘≠ニ呼ばれる女だったから

ダークブラウンのロングヘアー
スレンダーな割に豊満な胸
身に纏う色は常に淡色
最大の武器はその美貌
何よりその殺し方は冷酷
それが通り名の由来…

「用事の内容にもよるけど…」

クレアとはイゼルを介して知り合ったロバート
そのクレアが自分に何の用かと全ての脳内情報を稼動させる
でも皆目 見当もつかない

「ちょっとね…ここで話せるようなことじゃないわ」
「俺…達への利益は?」
「そうね…貴方達そのもの とでも言っておくわ」

一度 鋭い視線をロバートに向ける

「で どうするの?付き合ってくれるの?」
「…わかった じゃあ場所移すか」
「ええ」



二人が来たのはホテルだった
人に邪魔されずに話しの出来る場所ということで
クレアがこの場所を選んだのだった

「まさかだと思うが 俺と寝る なんてこと言わないよな?」
ロバートはまず一番有り得ないものとしてそう訊ねた

「えぇ そんなことじゃないわ」
クレアは何を言い出すのかと言わんばかりに呆れた表情でロバートを見る

「じゃあ なんだ?」
一層 何の用なんだ と思考をフル稼働させロバートは訊いた

「イゼルには あたしの身に何かあった時にどうしてほしいか頼んであるわ…
 今から話すことは…イゼルには黙っておいて 、 私が死ぬまで・・・」
「え?」
「いいから黙って聞きなさい」

女といえどもやはり殺し屋
いくらロバートがイゼルの一番側にいる人物だとしても
殺し屋からの―ましてやイゼルが認める程の腕を持つ―睨みには黙らざるを得ない

「あたしは たぶん…いえ、きっと近いうちに殺されるわ
 今の仕事は…確実に裏に[∀∃エース ]」がいるから アシードはあたしを殺しにくる
 だから 当分の間あたしからそれとなくイゼルを遠ざけてて」
「はっ!?そんなことし」
「まだ話終わってないわよ イゼルを死なせたくないのなら 今言ったことを守ることね
 じゃないとイゼルまで巻き込むことになるわ
 アンタは誰を差し置いてもイゼルが第一優先だろうからアンタに頼むのよ
 イゼル本人に言ったところで守りそうにもないもの わかった?」
「でも そうしたらあんたを死なせることになるんじゃ・・・」


「 言う事 きけないの? 」


その声はこれまでクレアから聞いたこともない低いドスの利いた声だった
ロバートはその声を聞いた瞬間
あぁもう死神の娘は次の獲物を自分から動かすつもりはないのだと悟った

「わかった・・・当分あんたからイゼルを遠ざける・・・」
「頼むわ…」





その夜から11日後の夜
一人の女が悲鳴をあげることもなく助けを請うこともなく死んでいった
クレア・ショールズ 享年24才



ロバートは今になって思う
クレアは・・・イゼルを心から愛していたのだと・・・



2010/01/22(20050912)
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